従来の揚げ物はアルツハイマーを^^;

日の「サラダ油」が認知症を進行させる!

アルツハイマー病の「真犯人」とは?山嶋 哲盛 : 脳科学専門医 著者フォロー

2015/09/21 9:00

「アセトアルデヒド」という言葉を聞いたことはありませんか? これは二日酔いの原因物質です。アセトアルデヒドであれば24時間以内に分解されて体外に排出されるので、さほど問題はありません。しかし、ヒドロキシノネナールは体内に残り、少しずつ蓄積されていく非常に厄介な代物なのです。

認知症患者の脳では神経細胞が死んでいる

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ヒドロキシノネナールは大事なキーワードです。覚えづらいので正確に暗記しなくても、「ヒドロちゃん」とでも呼んで記憶にとどめておいてください。

ヒドロちゃんは端的にいえば「毒」です。サラダ油の主成分であるリノール酸がセ氏200度前後に加熱されると、ヒドロちゃんは急激に増えます。

これが体内に入ると、まるでドミノ倒しのように細胞膜のリン脂質を酸化し、ついには、神経細胞だけではなくあらゆる臓器の細胞を死に追いやります。

そうなると、脳の神経細胞は死んでしまい、最終的には「海馬」という「記憶の指令センター」が萎縮してしまいます。

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海馬の萎縮は、認知症の大きな特徴です。認知症の人の脳をMRIやCT検査(断面像として描写)で調べると、脳自体が萎縮していなくても、海馬は必ず小さくなって隙間が空いているのを確認することができます。

つまり、サラダ油を取るという行為が、体内(特に脳内)にヒドロちゃんを蓄積させ、熱ショックタンパク質70(脳の神経細胞の生存に必須のタンパク質)を酸化損傷させます。その結果、神経細胞が死滅し、海馬が萎縮するという悪循環につながってしまうのです。そこで、私が診療において、患者さんたちに強くお勧めしているのが、「脱・サラダ油」生活です。

具体的には、家にあるサラダ油は捨て去り、原材料ラベルにサラダ油を原料とする「植物油脂」「食用植物油」などと書かれている市販品は口にしない生活です。サラダ油のみならず、それを原料に作られたマヨネーズやマーガリン、ドレッシングなども口にしないことです。

みなさん、「そんなの簡単!」と思うかもしれませんね。でも、いざ実践しようとすると、意外に難しいことに気づくはずです。

過酸化脂質によるアルツハイマー病発症機構の解明

研究課題

サマリー 2019年度 2018年度

研究課題/領域番号 18K19673
研究種目 挑戦的研究(萌芽)
配分区分 基金
審査区分 中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
研究機関 三重大学
研究代表者 及川 伸二  三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
研究分担者 山嶋 哲盛  金沢大学, 医学系, 協力研究員 (60135077)
小林 果  三重大学, 医学系研究科, 講師 (70542091)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
研究課題ステータス 交付 (2019年度)
配分額 *注記 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)

2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2018年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)

キーワード 過酸化脂質 / 4-ヒドロキシノネナール / 細胞死 / 酸化ストレス / アルツハイマー病 / GPR40 / 神経細胞死
研究実績の概要 わが国の認知症患者は現在500万人近くまで増加しており、アルツハイマー病はその約2/3を占める。アルツハイマー病は、記憶、思考、行動に異常をきたす不可逆的な進行性の疾患で、最終的には日常生活を行う能力さえも失われる。アルツハイマー病の脳内では、特徴的なアミロイド斑と神経原線維変化が起きており、脳内の神経細胞死も認められる。これらの特徴は、症状が出現する10年以上も前に始まっていることがよく知られている。一方、アルツハイマー病の発症機構についてはその詳細は未だ明らかになっていないが、酸化ストレスや脂質およびその代謝産物がアルツハイマー病の発症に関与していることが報告されている。特に、食用油に含まれている過酸化脂質が神経を始めとする細胞に細胞死を引き起こすことが注目されている。従って、本研究では、過酸化脂質のひとつである4-ヒドロキシノネナール(HNE)による神経を始めとする細胞死誘導とその機構について解明を行う。本研究では、Ca2+を細胞内に流入させ細胞死をひき起こすGPR40に着目した。GPR40は、脳の海馬・視床下部や膵臓のβ細胞に高発現し、植物油に含まれるトランス脂肪酸などの中・長鎖遊離脂肪酸と結合することで活性が上昇することが報告されている。しかし、マウスやラットなどのげっ歯類ではヒトに比べてGPR40の脳内発現量が著しく少ないことから、本研究では、GPR40の脳内発現量がヒトと同程度発現しているニホンザルを用いて解析を行った。本年度の実績概要は、ヒドロキシノネナール投与後、解析を行ったすべてのサルにおいて脳、肝臓、膵臓の細胞に神経細胞死を認めた。
現在までの達成度 (区分) 現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トランス脂肪酸含有飼料で飼育したニホンザルに4-ヒドロキシノネナール(HNE)5mgを毎週1回、半年間にわたり静脈内注射を行った。投与期間終了後、海馬や視床下部、膵臓、肝臓などの組織を摘出した。それぞれの組織について、免疫組織学的方法で光学顕微鏡を用い組織切片を観察した結果、5匹すべてのサルで海馬ニューロン、肝臓細胞および膵臓β細胞において小嚢胞変性と細胞死が認められた。神経細胞の電子顕微鏡による観察では、変性が認められた細胞においてリソソームの膜透過性の異常による破裂、細胞質の崩壊と核濃縮、細胞膜の破壊、ミトコンドリアの障害、オートファゴソームなどの現象が観察された。これらの結果から、HNE投与後のサルにおいてリソソームの顕著な減少による細胞死が誘導されたことが示唆された。従って、飼料に含まれるトランス脂肪酸がGPR40と結合することにより、過剰のCa2+が細胞内に流入しカルパインを活性化させ、HNEにより酸化された分子シャペロンであると同時にリソソーム膜の安定化作用も持つHsp70.1が切断され、これによりリソソーム膜の安定性が崩れ、カテプシンが漏出し神経細胞死が起きている可能性が高いと考えられる。

今後の研究の推進方策 今後は、神経細胞で、GPR40を介した、カルパインの活性化、Hsp70.1の切断、リソソームの破裂、カテプシンの漏出による神経細胞死の誘導機構の検討をさらに進める。また、この誘導機構が、肝臓細胞や膵臓細胞においても同様に起きているのか明らかにしていく。さらに、海馬や肝臓、膵臓などの酸化状態を、酸化ストレスマーカーとして定量性のある8-oxodGやMDAを用いて測定する。

報告書

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